【マイルス・デイビス Kind of Blue 「Blue In Green」】一本のマッチの火力

マイルス・デイビス Kind of Blue 「Blue In Green」

 

普段ちょっとだけ意識している異性が夢に出てくると、たいてい夢の中でその異性に対して恋ごころを育んでしまうのだが、そのような経験はあるだろうか、そのような夢は見ている間はとても気持ちがよく 、自分にとって都合よくできていて、日常生活では感じることがないような幸福感につつまれており、また、目を覚ますと日常とのギャップにガッカリしてしまう

ジャズの大名盤であるマイルス・デイビスのKind of Blue。このアルバムの3曲目「Blue In Green」はまさにその夢の感覚を目を覚ましていながらにして味わえてしまいそうな一曲である。

とくにビルエバンスのピアノの音色はロマンティックで寂しげで、且つ、紳士的でやさしく、恋に落ちそうなときめいた感覚と同時に癒しをもたらす…

 

この曲をきけばきっと殺伐とした日常にぬくもりをもたらすが、その温もりはマッチ売りの少女が雪の中でともした一本のマッチのように微々たる火力であり、

 それ自体が何かを変える力などない。

 

あたりまえか。

 

ただし、マッチ売りの少女はそのマッチがなければ豊かな空想を膨らますことさえできなかった。残念ながら物語の中の少女は雪のなか息絶えてしまうが、仮に生きながらえたなら自分が見た空想を現実のものにするために切磋琢磨したかもわからない。

 

音楽もおなじでさまざまなビジョンを聴いた人にもたらし、それを叶えたいと願う気持ちを醸成するきっかけをもたらすなあ― と思いました。

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